あぁ長良川、長良川。

30代始まりと共に経験、技術無しサラリーマンの現状を垂れ流します。

有楽斎の戦 織田長益

どうもこんにちは僕です。

 

今回の本はこちら

 

関ヶ原の戦いと大阪の陣を中心に4人の男たちの視点から話。島井宗室、織田長益小早川秀秋松平忠直

 

後述の3人は偉大な兄や養父、祖父によって人生に大きな影響を与えられどこか現代でも上流階級だからこその苦悩や苦痛を味わう事で、一般人には理解出来ない発想をしており同情してしまう部分もあり面白い。

 

話の中心として織田信長の弟にして、茶道で名を馳せた武将である織田長益のお話。

 

兄信長が戦の申し子と云うべき活躍を見せる中、戦は滅法弱く取り柄がなかった長益が千宗易と出会い、茶道への道を追い求めて行く。

 

ただでさえ戦が嫌いなのに、兄と比較され余計に周りからは疎んじられる。そして本能寺の変で甥の信忠を見殺しにして、自分だけ生き残った事で更に軽んじられるようになる。

織田信長の弟という事で秀吉、家康らに利用された。だが、茶道を続ける為、極める為にやりたくない事もやる!!という徹底した茶道第一を旨に戦国乱世を渡り歩く。

 

織田有楽斎

「私は生き延びる。生きて、利休でさえ届かなかった境地に辿り着いてみせる。世間が私をどれほど口汚く罵ろうと、構うものか。」

「いずれ大阪の城は焼け落ちる。江戸城とて、いつ誰かに攻め落とされるかもしれない。だが私の茶の湯と茶室は世に残り続ける。それこそが、私を嗤い続けた者たちへの、最高の復讐ではないか。」

 

小早川秀秋

「この歴史に残るであろう大戦の勝敗が、秀秋の手で決したのだ。卑怯者、裏切り者の烙印を押されようが、これに勝る褒美はない。」

「勝ち負けなどは二の次だ。天下人になりたいわけでもない。だが、秀秋はすでに、戦がなければ生きてはいけなくなっているらしい。秀秋は兜を脱ぎ、大きく息を吸い込んだ。血と硝煙の臭いが肺を満たしていく。生きている。そう、心の底から思った。」

「そなたの天秤も、徳川に傾いたか。責めるつもりはない。主を密殺する代償に、そなたは何を約束してもらったのだ?」

 

小早川秀秋は、関ヶ原の戦いで西軍を裏切り東軍勝利を決定付けた武将であるが、現代の評価としてはその時の裏切りの所為なのか、評価が著しく低い。

だが、この物語の秀秋は戦に覚醒したスーパーサイヤ人の様な人物像になっている。

 

戦がなければ生きていけなくなっている

ヤバ過ぎである。

 

実際に朝鮮出兵の際に総大将として、他の錚々たる武将達の支えもあるが蔚山城を包囲されていた日本軍を救出するため、指揮をとり見事に明軍を負かしている活躍も見せる。

その時、先頭で指揮を取っていたために後に秀吉から総大将の行いでは無いと叱責されるぐらい前線で活躍していたのだから、暗愚ではないだろう。

 

松平忠直

「家康が死ぬ」

声に出して呟くと、不意に目の前が開けた様な気がした。今まで自分を押さえつけていた重い何かが、いきなり消えてなくなったような心地。

 

「大御所様、ご健在!」

 

「そうか。生きておったか」

誰にも聞こえない声で呟くと、大きく息を吐き、忠直は点を仰いだ。

込み上げるものを堪えきれず、夕空に向けて哄笑を放つ。ほんの束の間の、あまりに短い夢。滑稽さに、笑いはなかなか治らなかった。

 

物語の中の忠直も中々性格が曲がった癖のある人物像で、父である結城秀康も人質としてたらい回しにされた事から、祖父である家康のことをよく思っていなかった。

 

そんな父親思いの彼が、父を蔑ろにしてきた家康への憎しみのようなものが溢れ出ている。

 

みんな癖があり、彼等の気持ちも分からないでもない。